※ユノがヴァンパイアに狙われる、という妄想小説です。苦手な方は読まないで下さい。
完全自己責任でお願いします。
Pure Blood 2
ユノが男性の後をついていくと図書室に通された。
先ほどまでここにいたのか、暖炉には火が入り部屋が暖かい。しかし、電気が通っていないのか、明かりはランプだけである。
旦那様、とガーシムが呼んでいた彼は、サイドテーブルに置いてあったグラスにワインを注ぐとユノに渡した。
「あ、ありがとうございます…」
自分にも注いだワインを掲げ、一気に飲み干す。
なんだか、雰囲気がありすぎてユノは思わずじっと見つめていた。
初印象では三十代後半ぐらいかと思ったが、よく分からない。
「そういえば、お互い名乗っていなかったな…私はカートだ」
「あ、私はユノです…ユノ・ユンホ…」
「東洋系の名前だな…」
「韓国です。ここには友人を訪ねてきたんです」
「…大学生…?」
「いえ…社会人です…」
「…意外だな…」
「そうですか?」
「ああ…なんていうか…世慣れてないというか…」
確かに普通のサラリーマンとしては働いてはいないので、そういう雰囲気はまとっていないのかもしれない。
芸能界で働いている事を言おうとしたが、カートがとても近くに立って自分の顔を覗き込んでいる事に気づいて息を飲んでしまった。
「…君は無垢の匂いがする…」
あの蒼い瞳に見つめられて、ユノはまた吸い込まれそうな錯覚を覚えた。
周りの空気が密度を増し、じっとりと肌にまとわりついてくるかのようだ。この人の瞳を見ていると、頭の中にモヤがかかり、うまく考えられなくなる。
頬が触れそうになるぐらいカートの顔を近づいてきたが、ユノは何も考えられなかった。
しかし、次の瞬間、ユノの頭にたちこめていたモヤが晴れた。何故か、カートがいきなり後ろに跳び下がった時からである。
「…何を持っている?」
「…え?」
カートの質問がよく分からない。
「胸元に何か入れている…」
「…え?…あ、ああ…これですか…?」
ユノは首から下げていた十字架を取り出した。
「…君はクリスチャンか…?」
「…そうです…けど…」
東洋人だから仏教徒だと思ったのだろうか?が、そんなに驚く事だろうか?
「…神を信じているのかい…?」
「…はい…」
「では、邪悪な存在も…?」
「…悪魔のことですか?」
「……聖書の中で悪魔が何人、人間を殺したか知っているか?」
「…?…いいえ…」
何故、そんな話をするのだろう…?
「10人だ…聖書の中で悪魔が殺した人間の数はたった10人…ところが神が殺した人間の数は2百万人以上…」※1
「……………」
「それなのに、どうして人は神を崇拝し、悪魔を恐れるのかな…?」
「……………」
ユノは自分の心臓の音がやけに耳に響いてくるのを感じた。心のどこかで鳴る警鐘のように。
「旦那様…」
ガーシムの声が聞こえ、図書室のドアがノックされた。
「お部屋と湯あみの支度が整いました」
「…そうか…では、ユノ君。ゆっくり休みたまえ…」
カートが部屋を出ていくと、すれ違いにガーシムが入ってきて、ついて来い、と言わんばかりに顎で合図される。
緊張が解けたユノは肩から力を抜いて、彼の後についていった。
案内された部屋は豪華で清潔な部屋だった。
大きな寝台が真ん中にあって、家具は少なかったが優雅なものばかりである。
電気が通っていないのはここも同じで、暖炉に火が入り、ランプと燭台で明かりをとっていた。サイドテーブルに置かれたミネラルウォーターのペットボトルが、不似合だが今は21世紀なのだと教えてくれる。
「風呂はそっちだ」
それだけを言い残してガーシムは去っていった。礼を言う間もない。夜中に突然現れて、これだけの支度をさせられたのだから、不機嫌になって当然かもしれない。
『明日、お礼とお詫びをしなきゃな…』
少々、気が引けるが、暖かい風呂の誘惑に勝てず、ユノは浴室に入った。
清潔なバスタブにお湯が満たされているのを見て、入りたくてたまらなくなったユノは急いで服を脱ぐ。が、十字架を外そうとして手を止めた。
これを外すと不安になる気がするのだ。我ながら子供っぽいとは思ったが、つけたまま入る事にした。
湯に入ると、気持ちよくてユノはホッと息をついた。
『なんだか、変な事になっちゃたな~』
現実離れした今の状況を思い起こし、ユノはどうしてこうなってしまったのか考えようとした。が、何かの気配を感じて、ユノは周りを見渡した。
『誰かいる…?!』
ユノはとっさにそう思ったが、狭い浴室の中、誰もいるはずがない。
蝋燭の明かりなので、炎をゆらめいて影が動いているからそのせいだ。
そう、言い聞かせようとするのだが、誰かがいるような感触がどうしてもぬぐえず、ユノは身体を強張らせる。蜜蠟の甘い香りが辺りにただよっている。
落ち着かなくて、ユノは早々と風呂を出た。
素早く、シャツとズボンだけを身に着け、寝台にもぐりこんだ。
首から下げた十字架に口づけ、祈りを捧げて身を横たえると、ユノはそのまま深い眠りに落ちていった。
翌朝、目が覚めると、ユノは急いで支度して部屋を出た。
広い古城の中でどうやって探せばいいのか分からず、廊下を歩いているとガーシムの方から現れた。
「…おはようございます…」
「……………」
ガーシムは無言で地図とメモを渡した。
ユノがメモを見てみると、カートからの手紙だった。
『おはよう、昨夜はよく眠れたかな?仕事があるので挨拶出来なくてすまない。気を付けて帰るように カート』
「どうも、ありがとうございました。夜中に押し掛けたのによくして下さって…」
「…車のガソリンは満タンにしておいた」
「…え…そこまでして下さったんですか?ありがとうございます…」
「……………」
早く帰れオーラをまとったガーシムには、何も言わない方がいいか、とユノはそれ以上、何も言わずに城を後にした。
地図の通りの行くとすぐに森を出て、携帯電話も使えるようになった。
朝日の輝きの中で車を走らせていると、昨夜の出来事が夢だったのかと思えてくる。
上着のポケットに残されたカートのメモだけが現実の証だった。
*********
「それが、帰国が一日遅れた理由?」
「…まあ…そういう事」
家に帰ってから帰国が一日遅れた理由をチャンミンに説明した。
「危ないな~何もなかったからいいようなものの、そんなところで泊めてもらうなんて…何かあったらどうするんです~」
「うん~自分でも不思議なんだよね~なんで家の中に入っちゃったんだろ?泊まるつもりなんてなかったのに…でも、まあ、何もなかったし…結果オーライってことで…」
「これから、出かける時はちゃんと調べて、地図持って行くようにね」
「分かったって。これから気をつけるから」
ユノは簡単に人を信用する。そんなところがチャンミンは心配だった。
芸能界という世界にいるには、あまりに純粋すぎて、したたかさに欠けている。その為に損したり傷ついたりする事も多い。
だが、ユノが芸能界に入ったのは必然な気もする。
平凡に生きるにはユノはあまりに美しすぎるから……
(次回につづく…)
※さあ、これからヴァンパイアがユノを狙いきて~チャンミンの王子様+ナイトに活躍してもらわないとね~v
※1 私が直接数えたわけではなく、聞いた話ですので間違っているかもしれません;すみません;
※ユノがヴァンパイアに狙われる、という妄想小説です。苦手な方は読まないで下さい。
完全自己責任でお願いします。
Pure Blood 1
車を降り、暗くなった森の中でユノはため息をついた。
「……まいった……」
すっかり道に迷ってしまった…
昔のダンサー仲間を訪ねて、北欧の小さな町に来てみたのだが、その日のうちに宿泊しているホテルに帰ろうとしたのが運のつき。帰り道で迷ってしまったのである。
『友人の勧め通り泊まらせてもらえば良かったな~』
後悔先に立たず。携帯電話を見たが深い森の中のせいか電波が通じない。森の中をあてもなくグルグル走り回ったせいで、ガソリンも残りわずかになっている。
『これは、明るくなってから動いた方が無難かも…』
今夜は車の中で野宿か~
と、覚悟を決めたユノの目に明かりが見えた。
誰かいる?ヘッドライトかな?
この一条の光を逃してはなるまい、とユノが明かりの方に向かって車を走らせると、大きな古城が出現した。
「…なんだ、ここは…」
昔話に出てくるお城のような古城である。人は住んでいるのだろうか?
少し驚いたが、明かりは確かにこの古城の窓からもれているものだった。ランプか何かの光である。
と、いう事は人がいる筈。こんな夜中に申し訳ないが、道を聞くか電話を貸してもらおうと、ユノは車を降りて立派な玄関の前に立った。
「すみません!」
ドアをドンドン叩きながら大声をあげる。失礼とは思いつつも背に腹は替えられぬ。大きな古城なので声が届かないかもしれないのだ。
しかし、誰も出てこない。
『聞こえないのかな?』
ふとドアを押してみると、それはあっけなく開いた。
『え?』
ユノはとまどいつつも中へ足を踏み入れた。城の中は外と同じくらいの暗闇が広がっている。本当に人がいるのか不安になりつつも…
「すみません~怪しい者じゃありません~道に迷ったんですが…」
とりあえず説明しながら入ってみる。
「誰だ!」
突然の掛け声にユノは飛び上がった。
声の方向に顔を向けると、小さなお爺さんがランプを掲げて立っている。
「…あ…怪しい者ではありません…道に迷ってしまって…」
「帰れ…」
「…夜分にすみません…でも、車のガソリンが残り少なくなって…」
「わしの知ったことか…早く帰れ」
「…本当に申し訳ないのですが…あの…道を教えてくれませんか…?」
「ガーシム、何をしている」
低く響き渡る声が聞こえて、ユノは一瞬鳥肌がたった。奥の暗闇の中で誰か立っているらしいのだが、お爺さんと違い明かりを持っていないようで姿が見えない。
「…旦那様…道に迷ったと申す者が…」
「…気の毒だな…泊めてやれ」
「ですが、旦那様…男ですよ…」
ユノはお爺さんの言っている意味が分からなかった。
『性別に何が関係あるんだ?』
が、白い男性の姿が闇の中からいきなり目の前に現れたので、驚いたユノの頭からそんな疑問は吹き飛んでしまった。
旦那様、と呼ばれた人は自分より少し背が高くて、黒い長髪の綺麗な顔立ちをした男性だった。
歳は三十代後半だろうか。
「…泊めてもらうなんてとんでもない。道を教えて頂ければすぐお暇します」
知らない人のところに泊まるのは、こちらとしても抵抗がある。
「…辺りが暗いうちはまた道に迷ってしまうだろう…夜が明けてから出発した方がいい…」
「いえ、申し訳ないですから…」
「そうしたまえ」
否を言わせぬ強い口調。命令する事に慣れている者の独特の威圧感があった。
ユノは彼がまっすぐに自分を見つめているのを感じた。射抜くような、観察するような冷たい視線に身体が緊張する。彼の瞳は深く蒼い湖水を思わせる瞳をしていた。じっと見ていると吸い込まれそうな錯覚を覚え、ユノは軽い眩暈を起こした。
「ガーシム、客間にお通し、湯あみの用意をしてさしあげろ」
「…分かりました…」
「用意が出来るまでワインでも飲んでいるといい。こちらに来たまえ」
「…あ…はい…」
軽い眩暈から覚めたユノは、泊まるつもりなんてなかった事を忘れて簡単に付いていった。そして、それを疑問に思う事もなかった。
(次回につづく…)
※TONEツアーでユノがヴァンパイアになってましたが、無垢すぎて可愛すぎて私は顔がにやけました…;女性が天使の仮装してましたが「逆でもいいんでない?」なんて思った事からこの話思いつきました;すみません…根っからマイナーなんで…;
※妄想小説です。苦手な方は読まないで下さい。
That is the reason why
むせるような湿気と緑の香り。
チャンミンは密林の中、自分が一匹の豹になっている事に気づいた。
『あれ?自分は豹になっちゃったのか?ま、いっか』
軽く考えて緑の中を走りだす。
豹になったチャンミンは、飛ぶように舞うように走る事が出来る自分が楽しくて、いつまでも駆け続けた。
目の前の視界が突然開ける。
一面に広がる草原に出たチャンミンは、一人の男性が座っているのを見つけた。
草原の中に座っていたのはユノだった。
ユノはチャンミンに気づくと、柔らかい微笑みを見せて手招きした。
「…おいで…」
豹になっているのに怖がる様子はまるでなく、近づいてきたチャンミンの頭を撫ではじめる。
「よしよし、どこから来たんだ?ジャングルに住んでいるのかい?」
どうやらチャンミンだと気付いていないようである。チャンミンはおもしろくなって、ユノの頬を舐めた。
「はは…くすぐったいぞ…」
ユノの笑い声をきいたチャンミンは、ますます楽しくなってユノにじゃれだした。
「こらこら…重いぞ~…はは…」
…ユノの笑い声が、笑顔が好きだ…
『ユノヒョン…大好き…』
チャンミンの胸がユノへの愛しさでいっぱいになる。と、いきなりユノが声をあげた。
「痛っ!」
ハッとしたチャンミンが急いで身を引くと、ユノの唇に血が滲んでいた。興奮してひっかいてしまったらしい。自分が豹の爪を持っている事を忘れていた。
先ほどまで、愛しさで溢れていたチャンミンの胸が、罪悪感に満ちてしまう。
「気にするな。お前のせいじゃないから」
しゅん、と沈んでいたチャンミンの頭をユノはまた優しく撫でてくれる。
お詫びに、と思ったチャンミンはユノ唇を舐めて血をぬぐった。
ユノの血はとても甘くて…
チャンミンは血をぬぐっているうちに、いつしか人間の姿に戻っていた。
そして、唇を舐めているのではなく、口づけていた。
「……ん……」
ユノの甘い吐息がチャンミンの唇をかすめる。薄く開いた唇に舌を差し入れ、深く口づける。
「…ふ…んん……」
苦しそうなユノの声が耳を掠めるが、甘い唇に酔いしれたチャンミンは口づけを止められなかった。舌をからませ、身体を草原の上に押し倒す。
「…チャン…ミン……」
ユノの掠れた声にぞくぞくする。
どうして、こんなにユノは『甘い』んだろう……
その声も、唇も、吐息も、笑顔も…
「チャンミン」
このまま、ずっとユノと二人で身体を絡ませ合っていられたら……
「チャンミン、起きて」
ユノの声に、チャンミンはガバッと起き上った。しばらくの間、自分が夢を見ていた事に気づかなかった。
「大丈夫か、チャンミン?疲れているのか?」
「…いえ…大丈夫です…」
どうやら、テレビ局への移動中の車の中で、自分はうたた寝をしていたらしい。
『…にしたって…なんで、あんな夢を見てしまったのだろう?』
チャンミンは恥ずかしくて、いつにもましてユノの顔がまともに見れなかった。
特に、ユノの唇を見ると、あの甘い口づけが甦ってしまうのだ。
目に入る度にエロテッィクに感じられて、頬が赤くなる。
ユノはそんなチャンミンの様子に心配そうだったが、訳が話せる筈はなかった…
後日、この時の収録がテレビで公開されると
「チャンミンは熱があったんですか?」
「二人は喧嘩したんですか?」
との問い合わせが殺到した。
※ユノとまともに目が合わせられないチャンミンっていつも可愛いですよね~v
でも、ユノが自分を見つめてない時はじ~~とユノを見つめてるんだよね~v
ユノは砂浜の浪打際に立って、夜明け前の真っ暗な空を見つめていた。
同じように真っ暗な海が目の前に広がっている。
目を閉じ、風が頬をくすぐる感触に身を委ねる。
耳に響く波の音。足元を通り過ぎていく水の感触。
海の中で暮らしていた時には知らなかった感覚。
声と引替えに足を得て、地上で生活するようになってから初めて知ったものだった。
…そうだ…初めて知ったものばかりだな…
誰かを心から愛した時、どれ程の激しい感情に揺さぶられるのか…
その想いが叶わないと知った時の絶望がどれ程のものなのかも…
今夜は王子の結婚式が盛大に行われた。
国中をあげてのお祝いで、城ではこれ以上ないくらいの豪華なパーティーが開かれた。
贅沢な食事や大道芸人達の楽しい余興が惜しみなく行われ、皆は歌い、踊り、喜びに満ちたお祝いを楽しんでいた。
ユノも王子に頼まれてお祝いの踊りを披露した。
…ユノは張り裂けそうな胸を抱えながら、悲しみを隠して舞った…
普段は人の心を察する事に長けた王子だったが、愛する人を得た喜びに満ちたあの人は何も気づかなかった…
その瞳に映るのは隣に座った愛しい人だけ…
目を開けたユノは手の中にある短剣に目を落とした。
昨夜、人魚の仲間達が、持ってきて渡してくれたものだった。
『この短剣で王子を刺して、その血を浴びれば人魚に戻れる。海の世界に帰ってこれるんだよ』
…みんな…心配して俺を見守っていてくれたんだな…
この短剣を手に入れる為に、みんながどんなに大変だったか分かっている。たくさんの犠牲を払ってくれたのだろう…でも…
…ごめん…みんな…俺はこの短剣は使えないよ…
……愛してるんだ……
…言葉に出来なくても…伝える事が出来なくても…想いが叶わなくても…
『王子が他の誰かと結婚したら、次の日の太陽が昇る前に、お前は海の泡になって消えてしまうだろう。それでもいいのかい?』
魔女に問われた時に、自分ははっきりと決めたのだった。
…あの人の傍にいられるのなら構わない、と…
一緒に過ごした時間は短かったけれど、本当に楽しくて…嬉しくて…それは命を引き換えにしても惜しくないくらい幸せで…
…だから…もう、いいんだよ…
空が白み始め、煌めいていた星が消えていく。
ユノは足を踏み出し、ゆっくりと海の中を歩いていった。
……さようなら…愛しい人……どうか…幸せになってください………
fin
※なんか、ユノだったらあっさり許して海の泡になっちゃうんじゃないかな~って妄想しまして;
実は人魚姫には別の説もあって、海の泡になる前に誰かが人魚姫に「永遠の愛」を与えたら、人魚姫は空気の娘になって永遠に生きられるってのもあるそうです。海外の映画でそういうの見た事あります(うら覚えですが;)このバージョンも書いてみたいな~もちろん、人魚ユノに「永遠の愛」を与えるのはチャンミンで~v
チャンミンが人魚だったら、ってのも考えてみたんですが、コメディになってしまった;
王子助けた後に目が覚めるまで傍にいて、王子に
「助けたのは僕ですからね。忘れないで下さいよ」とか言いそうで…;