※ユノがヴァンパイアに狙われる、という妄想小説です。苦手な方は読まないで下さい。
完全自己責任でお願いします。
Pure Blood 1
車を降り、暗くなった森の中でユノはため息をついた。
「……まいった……」
すっかり道に迷ってしまった…
昔のダンサー仲間を訪ねて、北欧の小さな町に来てみたのだが、その日のうちに宿泊しているホテルに帰ろうとしたのが運のつき。帰り道で迷ってしまったのである。
『友人の勧め通り泊まらせてもらえば良かったな~』
後悔先に立たず。携帯電話を見たが深い森の中のせいか電波が通じない。森の中をあてもなくグルグル走り回ったせいで、ガソリンも残りわずかになっている。
『これは、明るくなってから動いた方が無難かも…』
今夜は車の中で野宿か~
と、覚悟を決めたユノの目に明かりが見えた。
誰かいる?ヘッドライトかな?
この一条の光を逃してはなるまい、とユノが明かりの方に向かって車を走らせると、大きな古城が出現した。
「…なんだ、ここは…」
昔話に出てくるお城のような古城である。人は住んでいるのだろうか?
少し驚いたが、明かりは確かにこの古城の窓からもれているものだった。ランプか何かの光である。
と、いう事は人がいる筈。こんな夜中に申し訳ないが、道を聞くか電話を貸してもらおうと、ユノは車を降りて立派な玄関の前に立った。
「すみません!」
ドアをドンドン叩きながら大声をあげる。失礼とは思いつつも背に腹は替えられぬ。大きな古城なので声が届かないかもしれないのだ。
しかし、誰も出てこない。
『聞こえないのかな?』
ふとドアを押してみると、それはあっけなく開いた。
『え?』
ユノはとまどいつつも中へ足を踏み入れた。城の中は外と同じくらいの暗闇が広がっている。本当に人がいるのか不安になりつつも…
「すみません~怪しい者じゃありません~道に迷ったんですが…」
とりあえず説明しながら入ってみる。
「誰だ!」
突然の掛け声にユノは飛び上がった。
声の方向に顔を向けると、小さなお爺さんがランプを掲げて立っている。
「…あ…怪しい者ではありません…道に迷ってしまって…」
「帰れ…」
「…夜分にすみません…でも、車のガソリンが残り少なくなって…」
「わしの知ったことか…早く帰れ」
「…本当に申し訳ないのですが…あの…道を教えてくれませんか…?」
「ガーシム、何をしている」
低く響き渡る声が聞こえて、ユノは一瞬鳥肌がたった。奥の暗闇の中で誰か立っているらしいのだが、お爺さんと違い明かりを持っていないようで姿が見えない。
「…旦那様…道に迷ったと申す者が…」
「…気の毒だな…泊めてやれ」
「ですが、旦那様…男ですよ…」
ユノはお爺さんの言っている意味が分からなかった。
『性別に何が関係あるんだ?』
が、白い男性の姿が闇の中からいきなり目の前に現れたので、驚いたユノの頭からそんな疑問は吹き飛んでしまった。
旦那様、と呼ばれた人は自分より少し背が高くて、黒い長髪の綺麗な顔立ちをした男性だった。
歳は三十代後半だろうか。
「…泊めてもらうなんてとんでもない。道を教えて頂ければすぐお暇します」
知らない人のところに泊まるのは、こちらとしても抵抗がある。
「…辺りが暗いうちはまた道に迷ってしまうだろう…夜が明けてから出発した方がいい…」
「いえ、申し訳ないですから…」
「そうしたまえ」
否を言わせぬ強い口調。命令する事に慣れている者の独特の威圧感があった。
ユノは彼がまっすぐに自分を見つめているのを感じた。射抜くような、観察するような冷たい視線に身体が緊張する。彼の瞳は深く蒼い湖水を思わせる瞳をしていた。じっと見ていると吸い込まれそうな錯覚を覚え、ユノは軽い眩暈を起こした。
「ガーシム、客間にお通し、湯あみの用意をしてさしあげろ」
「…分かりました…」
「用意が出来るまでワインでも飲んでいるといい。こちらに来たまえ」
「…あ…はい…」
軽い眩暈から覚めたユノは、泊まるつもりなんてなかった事を忘れて簡単に付いていった。そして、それを疑問に思う事もなかった。
(次回につづく…)
※TONEツアーでユノがヴァンパイアになってましたが、無垢すぎて可愛すぎて私は顔がにやけました…;女性が天使の仮装してましたが「逆でもいいんでない?」なんて思った事からこの話思いつきました;すみません…根っからマイナーなんで…;