※ユノがヴァンパイアに狙われる、という妄想小説です。苦手な方は読まないで下さい。
完全自己責任でお願いします。
今までのお話
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Pure Blood 7 チャンミンはホテルの部屋に駆け込み、ベッドルームに向かった。部屋に飛び込むと、月明かりだけの薄暗い中、ベッドに横たわるユノの姿が目に入る。
「ヒョン?」
眠っているのだろうか?
ゆっくりベッドに近づくと、何か硬いものを踏んだ感触に眉をしかめた。
踏んだものを確かめるとユノがいつも身につけている十字架だった。
鎖が切れて落ちてしまったらしい。
『…今、ユノは十字架をつけていないのか…』
不安を覚えながらチャンミンはユノに近づき、肩を揺さぶった。
「…ヒョン…?」
横たわっていたユノが目を開いて、チャンミンを見つめる。
それを見てチャンミンは安心したが、次の瞬間、ドキリとした。
ユノが潤んだ妖艶な瞳でチャンミンを見つめてくる。
いつもより白い肌、紅い唇は誘うかのように濡れていて…
「…チャミナ…」
潤んだ瞳は真っ直ぐにチャンミンを見つめ、上半身を起こして近づいてきた。
「…ヒョ…ヒョン…」
いつもと違うユノの様子に、チャンミンは不安よりも動揺してしまった。
ユノはこんなに色っぽい瞳をしていただろうか…?
ユノはゆっくり顔を近づけて、チャンミンの唇に自分のそれを重ねた。
『…え……』
チャンミンの頭は真っ白になった。
心臓が飛び出してくるのではないか、と思うぐらいに高鳴る。ユノとキスしたのは初めてだった。
ユノの唇は柔らかくて、冷たくて、濡れている…
唇を離すと、ユノはそのままチャンミンの耳元で囁く。
「…チャミナ…」
艶めかしく響くユノの甘い声…
チャンミンの全身に痺れが走り、力が抜けていった。
しかし、いきなりユノが弾かれたように身体を離した。
「…あ…!」
ユノはチャンミンの手元を見つめ、そのまま気を失ってベッドに再び倒れ込んだ。
「ヒョン?!」
訳の分からないままチャンミンが自分の手元を見つめると、先ほど拾った十字架があった。
ベッドに横たわったユノを覗きこんだ時、その首に二つの小さな傷がある事に気付く。
まるで牙の跡のような…
「よく使い魔から逃れたな…」
不気味な声にチャンミンは後ろを振り返った。
そこにカートが立っていたが、チャンミンは驚かなかった。
心のどこかで、彼がいるだろう、と分かっていたのである。
「…お前…ヒョンに…ユノに何をした…」
恐怖も不安も消えて、怒りだけがチャンミンの胸に渦巻いていた。
「ユノの初めての獲物になれば良かったものを…」
「なんだと…」
「ユノを連れていく。彼は私のものだ」
「ふざけるな!」
チャンミンはカートに掴みかかろうとしたが、身体が突然宙に浮いた。
「…な…?」
疑問を感じる間もなく、チャンミンの身体はすごい勢いで飛んでいき、壁に激突する。
「ぐっ!」
背中を強く打ち付け、チャンミンは床に倒れ込んだ。
「…ふん…人間ごときが…」
「…うう……」
激しい衝撃を受けて息が出来ない。身体を動かせずにチャンミンは床に伏したまま立てなかった。
「これからユノは私のパートナーとなるのだ。お前は邪魔だ」
「……く……」
カートが剣を手に持って近づいてくる。チャンミンはなんとか起き上がろうとするが、見えない何かに抑え込まれ、指一本動かせない。
「貴様の止めは私がしてやる。光栄に思え」
カートが剣を振りかざす。
チャンミンは目をつぶったが、突然、誰かに抱きしめられる。
「あう!」
驚いたチャンミンが目を開けると、ユノに抱きしめられていた。
ユノはカートの剣を背中に受けて、チャンミンを庇ったのである。
「…チャンミン……」
ユノは気を失ってチャンミンの腕に倒れ込んだ。
「…ヒョン…ヒョン…!」
チャンミンはユノの背中に受けたひどい傷を見て、吐き気がしてきた。湧き上がってきた激情のままにカートを振り返ったが、彼の姿は消えていた。
『救急車を呼ばなければ!』
急いでチャンミンが起き上がろうとした時、傷が小さくなっている事に気づく。
『…え…?』
気のせいではなく、徐々にユノの傷は治っていき、やがて完全になくなってしまった。
起きている事態の意味が分からないチャンミンだったが、無事を確かめようとユノの名を呼んで起こそうとした。
「ヒョン…ヒョン…!大丈夫ですか…」
「……………」
「ヒョン…!ユノ…!起きて下さい!」
だが、いくら名前を呼んでも、揺さぶっても、ユノは目を覚まさなかった。
※次で終わりです…多分…;