※ユノがヴァンパイアに狙われる、という妄想小説です。苦手な方は読まないで下さい。
完全自己責任でお願いします。
Pure Blood 4
「チャンミンごめん…今から、知り合いが来るんだけど…」
「え?」
ホテルのフロントからの電話を切った後、ユノは少し戸惑った口調でチャンミンに告げた。
「誰が?急な用事?」
「…この前の旅行で迷った時に泊めてくれた人…」
「え?あの時の人がここに来る?なんでまた?」
「オフィスビルの駐車場で偶然会って…その時、このホテルに泊まってるって話した」
「…泊まっているホテルを教えたんですか?」
「…う、うん…」
「それで、訪ねてきたと…」
「そういう事…らしい…」
なんだかチャンミンは腑に落ちなかった。
マネージャーからも事務所からも、滞在しているホテルの名前は誰にも教えないように言われている。
偶然会った話をユノが今まで話さなかったのも気に入らないし、らしくない。
しかし、海外で偶然知り合いになった人と、またしても海外で偶然会う、なんて事がありえるのだろうか?
ユノも納得していないのか、不思議そうな表情をしている。
「ま、僕はこれから出かけますから別にいいですよ…せっかく訪ねてきたんだし追い出す訳にもいかないでしょう」
これは、本当だった。チャンミンは単独インタビューの予定があって、これから出かけるところだった。
「…ごめん…チャンミン…」
ユノは今日一日スケジュールが空いていて、チャンミンもインタビューだけなので、終わる頃を見計らって外で待ち合わせてショッピングしよう、と話していたのである。
ユノが項垂れているのをみて、チャンミンが何か言おうとした時、呼び鈴が鳴った。
「あ、はい…」
ユノがドアを開けに行く。
チャンミンは軽くため息をつきつつ、手鏡をとって髪の乱れをチェックした。
少し早いが、下に降りてフロントのロビーでマネージャーを待とうかな~と考えた。
持っていた手鏡に偶然ユノが部屋に入ってくるのが写る。
が、他に誰もいないので「あれ?」と思いながら振り返ると、ユノの後ろに長身の男性がいるのに驚いた。
『え!?』
もう一度、手鏡を覗くが、そこにはユノ以外誰もいない。
再度、振り返った時、その男性の目と目が合い、全身に鳥肌がたった。
『なんだ…』
男性は恐ろしい程蒼い瞳をしていた。その冷たさゆえだろうか…見つめていると寒さがこみ上げてくる。
「チャンミン、紹介するよ。この前お世話になったカートさん。カートさん、こちらはチャンミンで僕のパートナーです」
「…パートナー…よろしく…チャンミン…」
黒髪で自分と同じくらいの長身。整った顔立ちをした男だが、どこか傲慢さが感じられる態度である。手を差し出されても嬉しくない、と思いつつチャンミンは手を握り返した。カートは手袋をつけたままだったので、余計に腹がたったが、この男の素肌には触れたくない気がした。
「…じゃあ…僕は出かけるから…」
「え…もう?」
ユノが寂しそうな瞳をしたので、チャンミンは少し胸が痛んだ。だが、この男性といっしょにいると、無礼な事を口走ってしまいそうで怖い。
何より、先ほどの「鏡に映っていない」という不可解な現象が、チャンミンを嫌な気分にさせていた。一刻もここを離れて頭を冷やす必要がある。しかし、ユノをこの男と二人きりにさせておくのも嫌だった。
「じゃあ、私は出かけますので…失礼します」
「…あ、チャンミン…気をつけて…」
そっけなく挨拶をするとチャンミンは急いで部屋を出て行った。
フロントのロビーにつくと、急いでユノのマネージャーに電話する。
ユノの部屋に、昔、世話になった恩を売りに来た押し掛けファンが来ているから、すぐに部屋に行って見張っていて欲しい、と話すと、すぐに行くと言ってくれたので、チャンミンはほっと胸を撫で下ろした。
部屋でカートと二人きりになったユノは、少し不安を感じ始めていた。
「カートさん、何かお飲みになりますか?コーヒーはどうですか?」
「そうだな…頂こう」
コーヒーメーカーをセットする為、ユノはカートから離れたので少し落ち着いた気分になった。
「…先ほどの青年だが…チャンミンだったか…君のパートナーとはどういう意味でのパートナーだ?」
「どういう意味…とは…?」
「…友人という意味かい?それともビジネスパートナー?」
「友達…は近いけれどちょっと違いますね。仕事は一緒にしているけど、ビジネスパートナーなんて関係でもないし…う~ん…」
「…一生を共にするパートナー?…」
「あ、そうかも…それが一番ちかいかも…」
ユノは微笑みながら答えた。
「…なるほど……邪魔だな……」
「え?何か?」
「…なんでもない…」
カートの瞳が不気味な光を帯びたのをユノは気づかなかった。
※これからチャンミン目線になります。なかなか話が進まないな~;おかしいな~;